新聞の重要性

リビングトーク

べんぞう

新聞購読の現状

ご承知のように,新聞の発行・購読はネットニュースなどに押されて減少傾向にあります.

一般社団法人日本新聞協会1)によると,2000年には一般紙とスポーツ紙の合計発行部数は53,709千部(朝夕刊セットを1部として計算)でしたが,2025年には24,868千部と,実に28,841千部(2000年の半分以下)も発行部数が減少しているようです.

 これだけ発行部数が減少しているのですから,新聞購読者も同じように減少していることが類推できると思います.我が国の世帯数(2025年度)は58,956千世帯ですから1世帯当たり発行部数は0.42部になります.2000年頃には,1.13部でしたから,1世帯で複数の新聞を購読している状況だったようです.新聞社各社は厳しい状況です.

 新聞は編集者が工夫を凝らして紙面に多様なニュースを割り付けているので,紙面を開くと,読者の興味ある記事だけでなく,これまで関心がなかったような事柄についても目にとまれば読むことができます.こうしたことを通じて知識の幅を拡げていくことが可能となります.

また,政治,経済,教育,スポーツ,文化,天気予報,連載小説,社説など様々な記事が散らばっているのですから,読むことは愉しい,ということも実感できるものです.

 新聞が読まれなくなってきた背景にあるネットニュースは,たしかにいつでも,どこでもスマホがあれば簡単に最新のニュースにアクセスすることができます.しかも多くの場合は無料(登録をしないと見られないページもありますが)で読むことができるですから,若い人たちだけでなく,多くの人々が新聞離れをしている状況だと思います.

新聞購読の重要性

 さて,メディアの中に占める新聞の役割は上記のように大きく変化をしています.

 ところで,ここで述べたいことは,新聞のメディアとしての役割から派生して,その存在自身の重要性です.このことを以下のエピソードでお話したいと思います.

エピソード:自治会長の仕事と新聞

 私は昨年度(2025年度),京都市の某自治会(約60世帯)の会長をしていました.これまで会長職4回,副会長1回を担ってきました.会長は毎年度選挙で選出されることが自治会の規約で決まっています.

 さて,2026年の1月のことです.早朝,出勤しようと外へ出ると,ご近所のZさんがちょうど我が家のインターフォンを押そうとされているところでした.

 「何かご用でしょうか?」

 「私の家の向かい側にお住まいのXさんの家の郵便受けに3日分の新聞が置かれたままなんです.Xさんは毎朝6時30分には,新聞を郵便受けから取り出しておられるのですが.どうも変な気がします.こんなことを誰に相談して良いのかわからないので,取り敢えず会長さん(私ですね)のお宅に来ました.どうしましょうか?」

 「こんなことって今までもありましたか?」と,通り一遍の返事をして,内心は困ったなあ,どうすれば良いのかわからないし…(きっと誰にもわからない).朝の忙しいときに,こんなことを持ち込まれてもなあ….と腰が引けた気持ちになっています.Xさんは高齢者で一人暮らしなのですが,お子さんの家に行かれているのかも知れないし….その内帰ってこられるかも知れない….と思考がこの状態を打開するよりも,言い訳をする回路にハマっていきます.この間3分位ですね.でも,このまま放置しておくわけにもいかないので,

 Zさんに 「Xさんのお宅に行きましょう」と,身体を動かすことにしました.すると,不思議なことに,身体だけでなく精神のスイッチもオンになったようで,この事態にきちんと対応しようという意識に変わりました.こうなると,もう動くしかありません.

 Xさんのお宅の玄関に行ってもしっかり鍵がかかっているし,ドアを叩いて「Xさん,Xさん」と大声で叫んでも,全く反応はありません.

 そこで,スマホで警察か消防に電話しようとZさんと話をして,110番に電話しました.すると「うちではない」ということで,大慌てで119番に電話をしました.

 消防はすごいです.電話をすると「火事ですか,救急ですか?」と聞かれて「救急です.場所は◯◯,高齢者の方が室内で倒れている可能性があります」と回答すると,「数分で現場に行きます」との回答です.そして,本当に数分でサイレンを鳴らして消防車と救急車が到着しました.消防署が近くにあることがラッキーでした.

 手を振ってXさんのお宅を消防隊員の方に伝えると,てきぱきと作業を分担して裏庭から室内に入って行かれました.手際が良いのに感激しました.そして室内を確認されたのですが.「テレビはついているが,人はいないようです」とのことでした.その時に別の隊員の方がお風呂で高齢者男性が倒れている,と発見していただきました.体調を確認すると,体温の低下は著しいけれども心臓は動いているので,病院に搬送する,ということになりました.

 これでXさんは一命を取り留めることができました.

 消防車は消防署に戻り,救急車はXさんを病院へ搬送,ということでなんとか危機は乗り切ることができました.

 消防への通報がもう少し遅れたら,この日はとても寒い日だったので,ご高齢でもあるし,持ち堪えることが出来なかったかも知れません.

 当日,Zさんが新聞が入ったままの郵便受けを見て,異変を感じて,私の方に相談に来られたことで人ひとりの生命を守ることができました.

社会福祉協議会の会合で

 こうしたエピソードを区の社会福祉協議会の方に話をすると,実は新聞の宅配は見守りのツールとして大変に大事なものだということでした.

 近年は隣人との接点が希薄になっているので,高齢者のひとり暮らしなどでの異変に気づくことが遅れて孤独死などが増えているのです.しかし,新聞が未読のまま郵便受けに溢れていることに気づくことで,死を免れるケースも増えています,とのことでした.

 新聞は情報の媒体だけでなく,異変を知らせる重要なサインだということですね.

1)日本新聞協会:https://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php,2026年5月閲覧

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