東京へ行く

エッセイ・コラム

7月23日、思い立って東京へ日帰りで出かけた。思い立った理由は、航空会社で貯めたマイルが今月末で無効になるとのメールの知らせ。調べたら往復の航空券に十分に換えられる。それなら、と思い立った次第である。かつてマイルを貯めるために飛行機に乗る人がいる、と聞いて驚いたことがあるが、今回の私もそのレベルで、無駄にしたくないからマイルを使うことにしただけの無目的の旅である。

兵庫県からの日帰りとはいえ、東京滞在はゆうに8時間を超える。さて東京で何をするか。まずは井の頭公園の近くに住む姉夫婦と約2年ぶりの再会を果たし、お昼をご馳走になってから、猛暑の東京の日中を移動。それだけのことをするにつけても、東京の変化は激しく感じられる。行きの山手線では高輪ゲートウェイ駅が新設されている。(調べたら6年も前のこと。)降りた渋谷でも京王井の頭線への乗り換えに手間取る。以前に難なく行えたことがすんなりいかないのは、東京の風景の変化のためなのか、それともこっちの加齢による認知的問題のせいなのか。そんなことが頭をよぎる。

さて、その後にしたのは、breezeさんと同じく美術館巡り。今回は渋谷に近いこともあって乃木坂の国立新美術館。初めての訪問だっったが、ちょうど「ピカソmeetsポール・スミス 遊び心の冒険へ」という特別展が行われている。ピカソ展なのか、ポール・スミス展なのか、それも知らないまま飛び込むことに。英語では、Picasso, through the Eyes of Paul Smmith. こちらの方がよくわかる気もするが、日本語タイトルの「遊び心の冒険へ」は十分にキャッチーである。この展覧会ではパリ国立ピカソ美術館の所蔵作品およそ80点が展示されている。

夏休み期間に入ったとはいえ、東京は美術館も多く、おまけに熱中症警戒アラートが出る酷暑の日中である。来館者は多くなく、ゆっくりとピカソの作品を楽しむことができた。よく知られる「青の時代」の作品、これを描いたのはジョルジュ・ブラックではないのかと思わせるようなピカソの作品などが大まかな時代区分に従って展示される。絶えず実験を試みたこの大画家の足跡が伝わってくるようだ。大作として知られるものよりもその習作や、ファッション誌のグラビュアにピカソが書き込んだペンの線など、あまり知られていないピカソの遊び心に焦点が当たっている。そしてポール・スミスはというと、展示室のデザインが素晴らしい。ピカソの絵に描かれたストライプを壁面全体に再現したり、原色の壁一面を背景にピカソの絵を配置したりと、縦横無尽である。一つの絵画作品が、それを飾る展示室の雰囲気によってこんなにも変わるものだということを実感。照明を落とした展示室で貴重な作品をありがたく鑑賞するのとは違って、明るい色に彩られた部屋で気楽に大画家の絵を見るという得難い経験であった。

朝6時前に家を出て、帰り着いたのは夜10時近く。関西も東京も酷く暑い日であり、不要不急の遠出ではあったけれど、たいへん刺激に満ちた一日となった。

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